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2017/07/01

ゴクアーク様が強くてかっこいい小説 7/3ちょいちょい追記

【最終回後の話です。100年くらい経ってるかも? ゴクアークが復活して人間界から大魔界へ帰ろうというところ。当然エルドランに目をつけられるという状況。
エルドランが相変わらず鬼畜ですが、それ以外はまっとうなゴクヤミ話です。
ヤミノが条件付きで地上に生かされているという設定自体は2010年に使ったものだけど、べつに話は繋がっていない。】

「有事の際には私のためにその力を使うという条件で地上に置いてやった。ヤミノリウスはお前の側にはつかないぞゴクアーク」
エルドランの傍らに立つヤミノリウスを目にして、ゴクアークの表情に一瞬の動揺がみえた。
ヤミノリウスはこちらに目も合わせない。
それはそうだろう。あのゴミ魔導士めが。面倒なことを…。
一つ息をつきゴクアークは吐き捨てる。
「言っておくがそやつはたいして役には立たんと思うぞ」
「それは、使い方次第だろう」
エルドランが鼻で笑って言う。
わしの使役が悪いというのか。挑発するなら乗ってやる。
ゴクアークの竜首が鎌首をあげ、それぞれの口にエネルギーをたくわえ始めた。
「実力が足りんというのだ! わしの攻撃の方が数倍速い!」
竜がそれぞれにエネルギー弾を放つ。指ひとつ動かさず迎えるエルドランとの間にヤミノリウスが飛んで入り、防御の魔法陣が空中に展開する。キン、キンと無数に輝いては消える魔法陣は花火のようにエルドランの周りをとりまいた。切れ目ない弾幕に視界がふさがれ、ヤミノリウスはゴクアークの姿を見失う。
まずい、と瞬間的にエルドランのほうを見やれば、そこにはもう黒竜が牙を剥いていた。
「 ! 」
エルドランに身を引く間も与えず、それは肩口に食らいついた。...が。
"魔法がかかっている!?" 噛みついた感覚で違和感を感じ取り、ゴクアークは即座にエルドランから飛びのいた。
そして、肩を押さえ悲鳴をあげたのはヤミノリウスだった。
「ダメージ転送・・・!」
ゴクアークが思わず口に出す。かけた対象が受ける傷を自分に引き受ける術だ。エルドランはヤミノリウスに自身の身代わりを命じたのか。その上でわしと対峙させているのか。
「ゲスなやり方を・・・」
「頭脳的と言ってもらおう」
おのれよくも。ゴクアークの瞳が怒りに震えた。
「ヤミノリウス…ッ このクズ魔導士が! どこまでも邪魔なやつ、つくづく目障り極まる!! 」
憎悪をたぎらせてゴクアークが吼える。
睨み殺されんばかりの視線を受け、ヤミノリウスは硬い表情で顔をあげる。
頭上をかすめて黒い刃がエルドランに向かって飛んでいった。それはエルドランの頬を斬りつけ、そしてヤミノリウスの頬を鋭く裂いた。
速いなどというものではなかった。いつ攻撃が放たれたのか全く見えない。一歩も動けなかった。
獄炎のごとくうねる竜首。怒りに燃える20の眼に睨まれてヤミノリウスは戦慄した。
「大魔界へ帰還ののちには盛大にキサマの公開処刑を執ってやるわ! 覚悟しておけ!!!」
「…いたみいります・・・」
そう言って構えるヤミノリウス越しに、ゴクアークはエルドランを睨めつける。相変わらず表情のわからない男だが、いまや薄ら笑いを浮かべているようにしか見えない。よくも、とゴクアークは繰り返す。
よくもわが鳩をこんな風に使ってくれるーーーー!!

ごう、と唸りを上げてゴクアークが飛びかかる。
ヤミノリウスは各方向から咬みかかってくる竜をさばきつつ、エルドランを弾丸から守る。だが猛攻といっていいそれは目まぐるしく、四方から包囲をじりとせばめてくる。
『追い込まれる・・・』そう判断するが早いかヤミノリウスはエルドランに駆け寄り、手を伸ばす。
「来いっ!」
エルドランを引き寄せに右腕を回したところで、黒刃がエルドランの右腕をなぎ払うのを見た。ひいては、自身の右腕が叩き斬られた。
「ぐっ・・!!!」
即座に左腕でエルドランをひっつかみ、黒い光の球となってその場を離脱する。

ゴクアークはそれを追ってはこなかった。
息がつけるだけの距離をとると、ヤミノリウスはエルドランを突き放して姿を戻した。
「きさまは戦わんのか」
するすると形を取り戻していく右腕をかばいながら、ヤミノリウスが横目に聞く。
「ゴクアークとやりあう気分じゃない。わたしはお前が始末できればそれでいい」
「正直に言ってくれる…」
遠目にゴクアークを見やる。3本の竜首がこちらをうかがっているが、ゴクアーク自身は今いた虚空を向いたままだ。このまま退いてくだされば、とヤミノリウスは思うが、先刻の怒りの剣幕をみればそれはあるまい。
しかし、この状況、どうするおつもりだろう。
「ゴクアークとの盟約も生きているのだろう? わたしと同時に相反して命じられたらどうなる」
「さあ… 相殺で無効になるか、この身が裂けるか」
「魔属はそこまで契約に縛られるのか、面白い。・・見てみたいものだな」
こいつの悪趣味にはつくづく反吐が出る。
だがこの状況を打破するにはそれが手っ取り早いのは確かだった。ゴクアークがひと言命じるだけでこの契約は破綻するのだ。二重契約の代償とともに。
魔王がそれを知らないわけはない。さきほどの宣告の真意を推し測るなら、なにか策がおありなのか…。


『どれも最大値か あの馬鹿が』ゴクアークが思案をめぐらせて独りごちる。
エルドランに噛みついた時の感触から、どんな術式をもちいたのか予測を立てた。頬を切ってみて、発現までわずかに時間差があるのがわかる。 表裏一体ではなく、一旦情報に変換してから自己の身体上に再現しているのだろう。連続打撃が変換の速度を上回ればエルドランにダメージを与えることができるかもしれない。あるいは情報を転送している絡糸を断つことができれば。だが今の攻めの勢いで一太刀与えるのがやっとでは連打は難い。絡糸も無数に補助を伸ばし修復しあっている感じだ。
エルドランがどうそそのかしたのか、式に規定した値を予想すると、全身全霊をかけて護るという様相を呈している。
魔術にかけてはさすがわが直属といったところか。厄介だ。
いまはエルドランが動いていないが、こちらの出かた次第で手を出してくるかもしれない。そうなればいよいよ打つ手がなくなる。
こうなるとこちらの一手としては・・・。
『結局、そうなるか』
ゴクアークは内心で笑った。

「だいたいわかったわ」
ゴクアークがそう言って向き直る。
「エルドラン、きさまにはわからんであろうが魔術にも法則があり理屈がある。魔法において魔王をだしぬこうなどと謀った自分を呪うがいい」
そう言って翼を広げる姿の禍々しさよ。羽ばたくごとに絶望が雨となって降り注ぐような。巻き起こる風を受けながらその雄大さにヤミノリウスは目を見張る。

単純に仕組みはこうだ。エルドランのダメージが糸を伝ってヤミノリウスに流れている。
逆に言えば糸を流れた分しかヤミノリウスはダメージを受けない。一度に流れきる容量を超えた分はヤミノリウスにはいかないのだ。ならば転送最大値を超えた一撃をぶつけてやる。転送分を差し引いてもエルドランを再起不能にするだけの一撃を。
「ヤミノリウス、お前の耐力に期待している」
その声音にヤミノリウスはぞっとした。
エルドランの卑劣が目につき忘れがちだったが、ゴクアークこそ邪悪の化身、ゴクアークこそが魔王なのだ。
闇を従えるその威容はヤミノリウスさえ青ざめさせた。
ゴクアークの姿が変容する。それはエルドランにとってはかつての大戦で相対した姿。ヤミノリウスにとっては見たことのない、この上なく凶暴な姿だった。
それが攻撃を構える。
「ヤミノリウス!」
とエルドランが叫ぶ。
「身を賭してわたしを護れ!」
「死ねエルドラン!」

視界を覆うほど巨大な火球が忽然と現れ、エルドランに向かって放たれる。
これほどのエネルギーを前動作なしに生み出せるのか…!
ヤミノリウスはゴクアークのその破壊的強大さに畏怖したが、感心している場合ではない。
身を賭せと言いやりおったか。
のがれられない呪縛にのっとり、ヤミノリウスは迫る火球の正面に身を踊らせた。
「そこをどけ、ヤミノリウス!」
と、口をついて命じそうな自分をゴクアークは冷静にこらえた。
ヤミノリウスに当てるわけにはいかないが、エルドランの思惑にはまるわけにもいかない。
そしてこれは"賭け"ではない。
『"頭脳的"と言わせてもらうぞ。』
自身の全力の一撃を迎えうつヤミノリウスを、ゴクアークは睨むように見守る。
「ハズラム・サライヤ!!」
ヤミノリウスが大きな身振りで渾身の防御陣を展開する。
一枚、
それはまるで薄紙のようにやすやすと破られ、
二枚、
火球の勢いを殺すことすらできずに砕け、
三枚、
完成と接触が同時なほどの瀬戸際でまさに展開せんとしていた。
もはや後がない。四枚めを張るには時間も距離も足りず、なにより効果が期待できない。
『ならば』
三枚目の魔法陣が変形した。歪み、放つ光の色を変え新たに書き上がる。
決死の砦のそれは、転送陣だった。
召喚士でもあるヤミノリウスは空間を超えて魔界獣を移動させる術を最も得意としている。
才能を最大限活かすなら、防壁を作って防ぐより召喚陣を応用するのが当然だろう。
しかして、接触した火球はその平面を境に呑まれていく。
かわせる、と確信した。
このまま出口の魔法陣を後方に開けばいい。こんな大出力は移送空間に保持できない。流すのだ。
だがその術式を構築したとき… ざわり、という感触がヤミノリウスに伝わってきた。
魔王に触れられた時のような・・・心をのぞかれるような感触。
ヤミノリウスが蒼白になる。ゴクアークの最大の一手をかわせるなどと、一瞬でも思い上がった自分を恥じた。はじめから、わたしの手を予測していたのか。そうでなければ、こんな術は仕込めない…!
呑み込まれる火球が菌糸を伸ばし、魔法陣を侵食していく。魔王の術がヤミノリウスの術式を冒しているのだ。
『値が、書き換えられる…ッ』

ゴクアークの勝ち誇った笑みをエルドランは見ただろうか。
魔術を知らない彼に、今行われたことは理解できただろうか。
転送ゲートはエルドランの鼻先をかすめるほど顔前に展開し、ヤミノリウスが肩越しに振り返った時には・・・現れる火球の直撃を受けてエルドランは爆散した。
おお、一瞬早く自己の身の上に起こることを知るというのがこれ程の恐怖だとは。
こみ上げる絶叫が口から溢れるより早く、ヤミノリウスもまた砕け散った。
エルドランを飲み込んだ火球はそのまま地を穿ち、岩盤をめくり上げ、爆風が瓦礫を空高く飛ばして極炎をあげた。地獄絵とはこのような光景だろうか。黒煙を巻き上げて浮かぶ魔王の姿たるや見よ。太陽すら黒く染め上げるのではないかと思われるほどの闇をまとう、魔界の異形を。

ようやくして、跳ね上げられた瓦礫がバラバラと降り落ちてきた。
ゴクアークはゆったりと羽ばたき、眼下の光景を見晴らした。
手前の一画に、ちりちりと寄り集まる黒い欠片がみてとれる。ヤミノリウス、当然生き延びているだろう。計算通りだった。だがゴクアークの表情は浮かない。爆心の瓦礫の間にもう一つ、動くものがある。白い、ものが。
瞬殺のはずだった。即死させるつもりの一撃だったにもかかわらず、エルドランがまだ生きているのだ。誤算は何だったのか。エルドンの耐力が大きかったか。復活後の自身の力がかつてより弱まっているのか。ヤミノリウスの防壁が功を成していたのか・・・。
とはいえエルドランの容体は長くは持つまいとみえる瀕死であった。このまま放っておいてもまあ死ぬだろうが。
ゆるゆると四肢が集まり形を取り戻すヤミノリウスを目の端に確認して、ゴクアークが問う。
「もう一撃だ、いけるか?」と。
「無理です・・・っ!!」
ヤミノリウスが即答する。
「口がきけるではないか。こらえろ」
ふふ、とゴクアークが笑うのを、ヤミノリウスは当然そうでしょうともと思いながら聞いた。
ゴクアークはもう二撃めの体勢をとっている。
来たるべき衝撃に備えヤミノリウスは荒い息を整えつつ、その矛先を見やる。
『エルドラン・・・わたしはやはり"役に立たなかった"ようだな』
魔法を使うだけの体力はもうなく、盾となりにその側へ行くすべもない。とどめの一撃が迫るのをただ見守るしかなかった。
火球が放たれ、白龍となったエルドランが憎しみを込めた目で首をあげる。
ヤミノリウスはゴクアークの勝利を確信し、不敵に笑みを浮かべて、エルドランの消し飛ぶさまを見た。不思議と今度は恐怖を感じなかった。そして、意識はそこで途絶えた。


 

「ヤミノリウス」
と呼ぶ声がする。
「ヤミノリウス、起きろ。キサマにはまだやることがある」
ゴクアークの声でヤミノリウスは目を覚ました。ここは・・・?
体は繋がっているが、依り代だった骨格は失われて純粋な自分の霊体に戻っていた。フラスコもない。体を起こすと自分がゴクアークの手の上にいることがわかった。ゴクアークは普段通りの、ヤミノリウスのよく知る姿で、手のひらに彼を乗せて移動していた。
どこを飛んでいるのだろう。
指の隙間から景色を見下ろす。
ああ。
思わず声が漏れる。
その空の色。
その山脈の並び。
黒い森と、流れる川の上流に見える王城の影・・・!
なつかしい、大魔界だった。
帰ってきた。ここへ。魔王とともに。
震えるような心でヤミノリウスはゴクアークを見上げる。
近すぎてその表情は見えない。だが微笑んでいるように感じる。
「飛べるか?」
ゴクアークがヤミノリウスを宙に浮かべるように手をひく。ヤミノリウスはすうっとその脇をすべって側についた。
またこうしてゴクアーク様と飛べる…!
「先触れをせい」
命じられる言葉に無上の喜びを感じながら、ヤミノリウスは高らかに叫んだ。
「ものどもこぞりて歓喜せよ! 大魔王ゴクアーク様のご帰還であるーーー!!」



【勝ったあああぁぁ!! ま じ かーーー!!!
野山あを初の超ハッピーエンドですよ!!!こうなるとは書いててびっくりした!】
Gokuvsyami


序節譚。最終回後すぐのこと。この小説の100年くらい前ってことになるのかな。
なんでヤミノはエルドランに魔法をかけたのか・・
Magicaldraw_20170704_002805
ヤミノはゴクアーク様は死んだと信じきっていたのですよー。

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コメント

完結お疲れ様でした〜‼︎\(^o^)/
私も嬉しいです‼︎
今夜は祝杯をあげます‼︎
♪(*^^)o∀

投稿: 猪口民人 | 2017/07/01 22:00

ありがとうございます!

投稿: 野山あを | 2017/07/01 22:09

完結お疲れ様です(*´∀`)

ああ、一番読みたいと思っていたゴクヤミでハッピーエンドとは!

夢中で何度も何度も読み返してしまいました(*^_^*)

投稿: 青丹 | 2017/07/02 14:47

ありがとうございます!

投稿: 野山あを | 2017/07/02 14:49

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