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2017/06/28

ヤミノリウスを殺したい病の末期な小説

【最終回後の話です。何年経ったかわかりませんがゴクアークが復活してヤミノ(闇野)を見つけ出しました。どのようなとがめでも受ける覚悟だったヤミノはゴクアークに従い、もう一度魔導士として連れられていきます。場所は、人間界と大魔界のはざま、エルドランが監視するゲート。大魔界へ抜けようとするゴクアークの前にエルドランが立ちふさがります。
エルドランとゴクアークは数百年来の知った仲、ヤミノリウスはゴクアークの造った人形、という世界観です。
エルドランが過去最大値MAXにキチガイな、野山あを一番の脳内漏れ大後悔の一作。
2010/8/15ー19にニコッとタウンに連投されたものをまとめ、加筆修正しました。投稿日によって視点が変わるので、読んでてあれっ?ってなるかもです。】

さすがに本文たたむわー。
続きを読む で開いてねーーー

「ただで見逃せとは言わん。ヤミノリウスをくれてやる」
ゴクアークがエルドランに示した提案にヤミノリウスは息をのんだ。
「死ににくく創ってあるからな。キサマの嗜虐を満たすまで 存分に愉しめるだろうよ」
自分はエルドランに売られるのか。
「裏切り者は殺しても殺し足りないというわけか? 恐ろしいな、魔王さまは」
ゴクアーク様!、と言いすがりたいのを飲み込む。
罪をあがない、血の一滴まで身を捧げると誓ったからには、これは 最期の務めだろう。死ねと言われれば死ねる…。ましてこの命で役に立てるのなら当然喜ばなければならない。
しかしそれでもなお、
「いくがいいヤミノリウス、されるがままに殺されろ。エルドランに抵抗は許さぬ」
なんと酷いことをおっしゃるのだろうか…!

覚悟を決め命じられたままにエルドランの前に立つ。
エルドランが一瞥して笑う。
「そんな命令にまで従うのか。魔属とはあわれなものだな。呪縛の奴隷か」
「自らの意志だ。呪縛などではない」
「ふうん・・・」
エルドランはヤミノリウスの顔に手を伸ばした。
「お前の主の名は?」
「暗黒大魔王ゴクアーク様だ」
指が頬をなでるのが屈辱だったが、払いのけることもできず睨み返す。
「気に入らん目だな」
エルドランの指がまぶたをなぞる。
「ゴクアーク、お前もここにいろよ」
「死ぬのを見届けてやる義理などない。キサマの趣味に付き合う気もな」
「いろ。わたしの嗜虐心を満たすのが条件なのだろう? お前がいたほうが面白い…」
ゴクアークは面倒そうに翼をたたんだ。
エルドランがもう一度ヤミノリウスに問う。
「お前の主の名は?」
「大魔王ゴクアーク様だ」

「そのゴクアークの前でわたしの名を呼ばせてやる」

【前触れもなく左目をえぐられるヤミノ、叫び声、
エルドランの瞳に狂喜の色が見えます!】

いきなり目をやられるとは思わなかった。
手で左顔をおおいひざをつく。ぽたぽたと血がしたたった。治らない・・・。
物理的なダメージは瞬時に回復する体であるにもかかわらず治らない。

エルドランだからか。

治癒力は魔王に依るところの能力。光の化身エルドランじきじきの攻撃には打ち消されるのだろう。
肩をつかんで仰向けに倒された。
見下ろすエルドランの目に狂喜の色が見える。
「心臓は胸にあるのかゴクアーク。急所はヒトと同じに出来ているのか…?」
「ニンゲンの体のことなど知らん。心臓は…わしらと同じだ」
「了解した」
エルドランが右手をひらめかせると、その手に光の矢が現れた。剣のようにも見える。
無造作に、無表情にエルドランはそれをヤミノリウスの太腿に突き刺した。
「っっっっっっ!!!」
ヤミノリウスがもだえる。
「声を出さないとは思わなかったな」
「キサマの慰みの手伝いなどになるものか」
睨み返したエルドランの肩越しに、こちらに切っ先を向ける光の刃がぐるりと辺りを取り巻いて浮かんでいるのが見えた。
15本。
「そうか。何本目でその声が聞けるのかそれはそれで楽しみだ」

【15本刺しは当時の絵チャのゲストに描いてもらった絵になぞらえての設定です】

最後の一本は少しためらってへその下あたりに突き立てられた。
「ん・・・・・っく・・!!」
15本め。
ヤミノリウスはついに声をあげなかった。
エルドランがわずかにためらったのは、それが初めてボディへ損傷を与えるものだったからだ。致命傷になってはこれからが楽しめない。
他の14本は全て四肢を磷り付けにしていた。命にかかわらないよう吟味して、角度も深さも充分に計算されて。気を失わないよう出血も最小限に抑えられていた。
全体の反応から、人間の体とは違うのがわかった。まあ腹に内臓があるわけもない。下腹部を刺しても死に至ることはなさそうだった。体内がどうなっているのかは見当がついた。ただ許しがたいのは…
「私に似せて創ったのか」
「どうだか」
ゴクアークがにやりと笑う。ヤミノリウスに対する憎悪がいや増しした。こいつはヒト型魔界獣のうちの一匹ではないのだ。ゴクアークが側に侍らせるために、わざわざこれを "こう" 創ったのだ。許しがたい冒瀆だった。

髪をつかみ顔を向けさせる。相変わらず挑戦的な目でこちらを見返してくる…。気に入らない。
エルドランが手をかざすとヤミノリウスに突き立てられていた刃がすべて引き抜かれ、一本にまとまってその手に収まった。
ぐったりと四肢を投げ出した姿に問いかける。
「この世を統べる王は誰だ?」
「ゴクアーク様の他にない」
「私の名を忘れているなら思い出させてやらねばな」
切っ先を右肩に定めると左手でヤミノリウスの上腕を掴み、肩の関節に刃を突き入れねじり上げた。ごりっ、という脱臼の感触。
「が・・あぁっ・・!!」
ヤミノリウスがたまらず声を上げた。
みしみしと腱をちぎりながら腕がねじ切られていく。骨がお互いに離れ、その傷口から突き出して見える。
「ぎゃあ・・ああああああああっ!!」
とめどなく流れる血と同じほど、ヤミノリウスの叫び声も口から溢れ出た。
黒い血がエルドランの腕を染め上げた。
正確には血ではない。闇だ。凝縮された闇そのもの。
こんなものは命ではない。
だから 破壊するのに憐れみなど必要ない。
「あああああああ!!!」
ニセモノだ、こんなものは。
ぶらりとさがっている腕を両手で刃を構えて断ち切ってやった。
ヤミノリウスが身を丸めてその肩口をかばう。
先ほどまでぐったりとしていたくせに、よくまだ動く、この人形が・・・!
残った手で肩を押さえているのを引きはがし、その手のひらを両手で捧げ持って見た。
「5本しかなくなってしまったが、充分か?」
ヤミノリウスの上げる叫びに明らかに興奮してエルドランの声もうわずる。返事を待たずその親指の爪が剥がされた。
絶叫があがる。

堪らない・・・・

長く尾を引く悲鳴に聞き入ってエルドランが歪んだ愉悦に浸る。
一本一本、嬲るように。充分に苦痛を味わわせながら。うっとりと問う。
「お前の主の名は?」

叫び疲れる。
はあはあとヤミノリウスは地獄を耐えていた。
5回ともゴクアークの名を呼んだ。何をされようと、どんな責め苦であろうとこの忠誠は折れない。絶対に折れない…! だが・・・もう終わらせて欲しい…。すぐそこにいながらこちらに目も向けていないゴクアークの姿に、自然と目がすがる。赦しを請える身ではない。憐れみなど期待すべくもないが、裏切りへの報復に満足するともみせない無関心さが悲しかった。
いっそ右目も失っていれば、こんなみじめは感じずにすんだかもしれない…。

爪のなくなった左手を捨てたエルドランが、そっとヤミノリウスの顎を持ち上げる。白銀の輝く肌に真っ黒い血のまみれたその指が異様に美しく目に見えた。
「口を開けろよ」
・・・・。
「私に抵抗するなという命令ではなかったか?」
開けようにも痛みに歯を食いしばっていて、顎を緩めるだけで精一杯だった。
エルドランが指をこじ入れ、牙の一本をつまんだ。何をされるのか、もう考えたくもなかった。

「が・・あ・・・っ! ごふっ…」
声を限りの絶叫がひとしきり終わったと思えば、今度は痙攣するような苦悶の吐声だった。いつまで続けるのか、この男の趣味にはいいかげんうんざりする。
その惨状に目を向けた。
まさに血の海。
まず かたわらに転がった右腕が目に入った。
そしてもがくヤミノリウスにおおいかぶさり、口をこじあけたまま放さないエルドランがいた。口内に指を突き入れて何かもてあそんでいる。おおかた歯でも折ったのだろう。
口腔に溢れる血にむせてごほごほと咳き込むヤミノリウス。そのしぶきを返り浴びるエルドランの凄惨さよ…。これほどの血にまみれて、なお光り眩しい白銀の異様な輝き。戦慄せざるを得ない。
「もう殺してやったらどうなのだ」
ゴクアークがついに口をだした。

『ゴクアークさま・・・・』
ヤミノリウスの視線の先をエルドランが振り仰ぐ。
ゴクアークの辟易した視線が8対あった。
やっとこちらを見たか…。と、エルドランは新たな楽しみに期待して笑った。
「お前の前で私の名を呼ばせると言っただろう? これからだ」
ヤミノリウスの顎をひねり、口の中の血を吐き出させると
「まだ喋れるだろうな?」
と確認する。もちろん喋れるはずだ。そのために心肺には一切傷を与えていないし、今すぐ締めたくなるような細いのどにも手を付けずにおいておいた。
「私にすがりついて嘆願しろ。どうして欲しい?」
(殺して欲しい・・・!)それはもう押さえようもない欲求だった。この痛苦から逃れたい一心がどうしようもなくヤミノリウスの精神力を削る。
「・・・・・・・。」沈黙するのが精一杯の抵抗だった。
「ゴクアークが見えると言いにくいなら、右目もつぶしてやろうか?」
「や…!」
「や?」
憐憫など感じない。生意気だった目がようやくみじめらしくこちらを見ているのが満足感を誘う。
立ち上がり、蹴り転がした。うつぶせになったヤミノリウスの頭を踏みつける。
「私を賞賛し、泣いて懇願しろ。どうして欲しい!?」

それでもまだ今少しばかり、エルドランを楽しませることにはなった。ヤミノリウスは屈しなかった。だが容赦ない責め立てと甘い誘惑に、ついにヤミノリウスもすべての気力を根こそぎ持っていかれた。
折れる・・・。
いつ終わるともない虐待につぐ虐待に、限界だった。ついに。
「…エルドランさま・・・殺して…下・さい・・・どうか…」
心が痛かった。
今まで受けたどの拷問よりも、どの痛苦よりも、深く…深く痛い。体ではなく心の痛みに涙があふれた。
エルドランが哄笑する。
「はは・・・はははははははっ!!! 聞いたかゴクアーク? 屈したぞ、私に!」
屈辱・・・。もうゴクアークの言葉を聞くのも拷問に感じる。魔王を裏切り、あげく最後の忠誠すら、守れなかった…! ゴクアークはなんと言うのだろうか。どこまで罵られるのだろう。それを聞く前に死にたいと願った。
だがゴクアークの発した言葉はヤミノリウスの予想とは全く違った。
「聞こえなかったな」
あり得ないこたえだった。
エルドランがくくく、と笑う。
「そうか。ではもう一度言わせてみよう」
「もうよいわっ!」
苛立ったゴクアークが翼を広げ威嚇する。
「キサマの嗜虐を満たすという条件はもう果たしただろう。キサマの趣向には反吐が出る・・・」
「殺すとこまでが込みではないのかな? 私を満足させるなら。」
「は! 殺す気があるのか疑わしい。いつまで続ける気か知らんがわしはこれ以上付き合えぬ」
ゴクアークがヤミノリウスを見下ろす。まったくよくもまあ、死ににくく創ってしまったものだ。
「盟約の竜紋あるかぎり我が臣下、わが下僕…。口先ごときで主の変わるものではない。ヤミノリウスⅢ世、わしが命じる。自らの意志で命を絶って死ね」

「・・・・・・・!」
その言葉は、赦されたと思っていいのだろうか。
自分はまだ、ゴクアーク様に帰属するひとりでいられるのか。
盟約は今も生きているのか・・・・!

かすむ目でその威容を見上げる。
ゴクアーク様…。
いつ見ても そのお姿が麗わしい。
あの強大で絶対の破壊の力。闇を呑み夜を喰らう、黒の王。邪悪の化身。
あの方が わたしの主。あの方こそが わたしのすべて。
命ぜられればこの身果てるまで。死ぬのは易い。
死など厭わないと

・・・そう、思っていた。


だが今はかけらけた言葉があまりにも身にしみる。
人の世で愛を知ってしまった自分には、どうしてこの情けを格別と感じずにいられよう。
涙が止まらない。
「死にたく…ない……」
あれほど絶望していた自分の心が、今は叫ぶ。
死にたくない。
死にたくない!
あの方と一緒にいたい。生きていたい! あの方の側に、一緒に飛びたい!!
「死にたくないっっ!! 死にたくありませんゴクアーク様!!」
まだわたしは、わたしはあなたのおそばにいたいっ・・・・!!!

「はは、驚いた! ここにきて命乞いとは!」
エルドランがあざ笑う。だがもうそんなものは何でもなかった。
醜態など、いくらでも晒してやる。
「エルドランさま、お許しください、どうかお助けください!」
恥じらいもなく叫ぶ懇願にエルドランもひるむ。
「右目がいるなら差し出します、左腕が邪魔なら砕けばいいっ! でも命はお助けくださいっ! 殺さないでください!!」
「キサマ…!」
エルドランがヤミノリウスの首に手をかけ吊るし上げた。
つぶれる喉で、それでも声の限り、わめき あがき 叫んだ。
「助けて、助けてください! どう・・か、 っは… っっ…」
首が絞まる。エルドランの顔からは歓喜が消えて、不愉快そうな憎しみの表情があらわれていた。
魂の嘆願、なりふり構わぬ命乞い。エルドラン自身、これが聞きたかったはずなのに、なぜだろうエルドランは不快でたまらない。
右目に触れられる感触。
最後にゴクアークを見た。
盟約の時と同じ、見下ろすあの8対の目…。
視界を失ってもヤミノリウスは痛みを感じなかった。
泣きじゃくりただ叫んだ。渾身の力で。

「 死 に た く な い っ っ ・・・・ !!! 」

それは寸分違わぬ正確さだった。
角度も、強さも。
ヤミノリウスの心臓を貫いた一撃は、エルドランか。それとも創り主たるゴクアークのなせるわざか。


闇を巻き上げ、一陣の渦となって
ヤミノリウスは消滅した。


「泣いているのかエルドラン・・・」
「別に…」
流された血もなにもかもが塵なってと消え、そこにたたずむ純白の人影にゴクアークが静かに語りかける。
「お前が最も憎むものだったな」
「大嫌いだ…」
自分と同じ・・・。

作り物のくせに愛を語る。

自分自身を見たようで、嫌悪する。
「また創るのか」
「さてな。あれ以上のものはできまい」
「私にないものを持たせるな…!」
「かつては持っていただろう」
かつて、エルドランも愛を持っていた。ゴクアークは知っている。
ゴクアークが羽ばたいて舞った。
「行かせてもらうぞエルドラン。条件は果たした…」
エルドランは顔をあげ、静かにそれを見送った。


【はい ここまで! なんと最後はゴクエルかよっていうww
ヤミノリウスがエルドランの似姿だというびっくり設定が初登場した一作でしたー!】

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コメント

掘り起こす手間を省いて頂き、ありがとうございます(^-^)
感想は後ほど〜〜w

投稿: 猪口民人 | 2017/06/28 20:13

無理にコメントしなくていいのよ スルーでも
こっちからどうだった?なんて聞く野暮もしないわ

投稿: 野山あを | 2017/06/28 20:17

感想その1、頂戴致しました。いただいた視点で読み返しますと、これはたしかに亜衣子のせいで道を誤ってしまった彼の悔恨の最期だと痛感しました。
7年経ってそんなふうに新しく感じることができて、ああただの黒歴史にしなくてよかったと、そう思えるようになりました。ありがとうございます。

投稿: 野山あを | 2017/06/29 08:33

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